医者が米国で妊婦になった【10】絶対音感が狂った (TдT)
今回は妊婦シリーズのやや番外編をお送りいたします。
絶対音感と基準ピッチ
音叉やピアノなどの基準となる音と比べなくても、音の高さが分かる能力を絶対音感と言います。鳴っている音が「ド」と分かる、という感じ。
さらに正確に分かる人だと、基準のラの音(オーケストラが演奏開始前に調弦しているあの音)が何ヘルツなのか当てられることも。
国際標準は「ラ=440Hz」なのですが、ちょっと高めにすると華やかに聞こえるので「ラ=442Hz」、ときには「ラ=444Hz」くらいまで上げることもあるのだそうです。
NHKの時報音は国際標準で、「ピッ、ピッ、ピッ、ピーン!」の「ピッ」が440Hz、「ピーン」が1オクターブ高い880Hz。(周波数(Hz)が倍になると1オクターブ高く聞こえます)
何十年も前に録音されたオーケストラ曲がなんとなく重く低く聞こえるのは、最近のものよりもわずかに低い音程で演奏しているからです。
…狂った? 狂った!
で、私はそれなりに正確な絶対音感があって、440Hzと442Hzの違いが聴き分けられたのですが、妊娠中期頃からそれが狂ってきました。
ある日とつぜんズレたなら気づきそうなので、徐々に進んできたのでしょうか。
古い時代の録音のオーケストラ曲のはずなのに、やたらと華やかに聴こえるな…と違和感をおぼえたのが始まりで、ダンナの協力のもと今テストしてみたら、1/4音〜1/2音ズレている…!! 上記のNHK時報も「ラ」に聞こえません(´・ω・`)
1000Hzと1010Hzの聴き分けテストはあっさり合格したので、相対音感の鋭敏さは失われておらず、自分の頭のなかの基準点がズレただけのようです。
つわりで味覚や嗅覚が変わることを考えると、妊娠で聴覚に影響があってもおかしくない気も。
しかし、医学論文を検索してみてもそんな報告は見つけられず。プロの音楽家が妊娠して音感が狂って困ったというニュースも聞きません。
偶然なのかなぁ…でもこれ以外に絶対音感が狂う理由も思い当たらないけれど…
絶対音感と医学論文あれこれ
てんかんや痛みの治療に使われるカルバマゼピンという薬がありますが、これを飲んで絶対音感が狂った方が報告されていました↓
Pitch perception shift: a rare side-effect of carbamazepine. - PubMed - NCBI
Half pitch lower sound perception caused by carbamazepine. - PubMed - NCBI
両方とも日本発の論文なのは、偶然なのか副作用の出かたに人種差があるのか?
また、絶対音感を身につけるには幼少期からの訓練が必要とされていますが、バルプロ酸(これもてんかんや痛みに使われる薬)を飲んだ人が成人後に絶対音感がついた、という報告も見つけました↓
Valproate reopens critical-period learning of absolute pitch. - PubMed - NCBI
両方とも脳に作用する薬なので、そのへんが鍵なのでしょうか。
それとも、今まで知られてないだけで、内耳にも何らかの作用がある薬なのかもしれません。
というわけで、
・絶対音感が狂った
・相対音感の鋭敏さはそう変わらず
・理由は不明
・妊娠との因果関係も不明
でガックシきているよ、というご報告でした。
産んだら元に戻るかなぁ…(´・ω・`)
同じような症状があった方、いらっしゃいますか?
※冒頭の妊婦イラストは「いらすとや」さんのフリー素材をお借りしました。
いつもかわいいイラストをありがとうございます。