医者が米国で妊婦になった【7】 腰痛で婆ァと化する
一難去ってまた一難
初回のエコーで絨毛膜下血腫が見つかってヒヤヒヤしていましたが、その後のエコーで自然吸収されているのがわかり、無罪放免となりました。よかったよかった。
さて、つわりもピークを越えた感があった12週ごろに、次のマイナートラブル「腰痛」がやってきました。次から次へと容赦ないですな。
寝た状態から座って、立つ。立った状態で方向転換する。床に落ちてるものを拾う。
日常生活のなかで何気なくやってたはずの動作がいちいち大変で、「えっこらせ!」「ふんっ!」と掛け声がないとできません。中腰のまま数秒間うごけなくなることもしばしば。
完全に、婆ァです。
腰(骨盤の後ろ側)に、仙腸関節というとても頑丈であまり動かない関節があるのですが、明らかにここがガタガタ。日頃、上半身の体重を◯◯年に渡ってだまって支えてくれていたのが、自己主張して悲鳴をあげてる感じです。
このまま腰痛の奴隷になるのもくやしいので、まとめてみました。
腰痛の科学: 一般論
まず妊婦に限らず、腰痛の一般論としては、以下のようなのがあります。
「要注意な腰痛」の見極め(腰痛のred flagと呼ぶこともあります)
・6週間以上続く
・横になるとより痛くなる
・睡眠中に痛みで目が覚める
・熱・寒気・寝汗がある
・体重が減った
・脚や会陰部のしびれがある
・尿漏れがある/尿が出せない
・交通事故や転倒のあとから痛くなった(高齢者の場合は、尻もち程度でも)
・もともと大きな持病がある(がん、免疫が弱る病気など)
・背骨に沿ったど真ん中を叩くと痛くて、背骨の左右の筋肉は痛くない
上記に該当する場合は、医者にかかって原因を調べたほうがよい場合が多いので要注意です。
上記のどれも当てはまらない腰痛はこわい病気ではない場合が多く、「急性腰痛症」という苦しまぎれの病名がつく、ふつうの腰痛の可能性が高くなります。
妊婦の腰痛の科学: 原因
妊婦の腰痛の原因はいろいろありますが、
・体重が増える→ 腰の負担が増える
・お腹側に重心が移動する→ 腰の前弯がきつくなる(反り身になる)
・お腹が大きくなる→ 腹筋が引きのばされて筋力低下→ 体の前後の筋力バランスが崩れる
・リラキシンという「関節ゆるゆるホルモン」が増える→ 関節が不安定になる
などいろいろな要素が複合して起こるようです。
どれもこれも産むまで解消されないですね(´・ω・`)
↓ まとまってて読みやすかった論文(医療者向け、2008年、英語、PDF)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2684210/pdf/12178_2008_Article_9021.pdf
妊婦の腰痛の科学: 対処
医学論文のまとめサイト的な論文のシリーズ「コクラン」の2013年の論文によると、
・運動療法をしないより、したほうがいい(中でも水中運動がオススメ)
・ハリ治療が効くかもしれない
・運動+骨盤ベルトがいいかもしれない
が骨子のようです。
高血圧や糖尿病のように、治療効果の指標となる数値がきちんと決まっていたり、薬を飲むグループ/偽薬を飲むグループをはっきりと区別できる分野なら、もう少し歯切れのいい「オススメ治療リスト」があるのですが・・・
↓コクランレビュー(医療者向け、2013年、英語、PDF)
科学的に証明されているかどうかはさておき、大した手間がかからず心身に害が少なさそうで効きそうなものなら試したらいいじゃない、というスタンスの医者としてオススメしたいのがこちら↓
Back pain during pregnancy: 7 tips for relief - Mayo Clinic
米国の有名病院メイヨークリニックの患者向けサイトで、
・姿勢を良くする
・適切な靴をはく、骨盤ベルトで支える
・物を拾うときは膝を曲げる(腰だけを曲げて前かがみになるのはNG)
・横向きで寝る
・温めてみる/冷やしてみる/マッサージしてみる
・定期的に運動する(かかりつけ医の許可を得てから)
・ハリ治療やカイロプラクティックを考慮する(かかりつけ医の許可を得てから)
・以下の場合は医者に相談する: 腰痛がひどいとき、性器出血があるとき、発熱があるとき、排尿時に痛み/焼けつく感じがあるとき
だそうです。
これならやれそう d(*´ω`*)b
腰痛の個人的経験談
あぶない腰痛ではないことを確認したのち、腰痛クンとの共同生活が始まりました。
いちばんひどかったときは椅子に5分と座っていられず、楽な姿勢を求めてゴロゴロしたり体育座りしたりと頻繁に姿勢を変えていて、ひとり学級崩壊状態w
妊娠中でも比較的安心して使える痛みどめはあるのですが(アセトアミノフェン)、やっぱりできれば飲みたくないし、常時痛いわけでもないので結局お世話にならず。
骨盤ベルトで締めると良くなりそうな気がしたので産科の先生におすすめベルトを尋ねてみたところ、「妊娠後期ならともかく、こんなに早い週数(13週)ではあんまり使わないわねぇ、効くかなぁ?」とのこと。
米国ではあまりポピュラーじゃないのか、マタニティーグッズ屋さんでも骨盤ベルトはほとんど置いてありませんでした。日本から取り寄せるのもおっくうで、ひとまずベルト系は試さないことに。
ストレッチをしたり、ダンナにマッサージしてもらったり、電子レンジで温めるホットパックをしたり、といった地道な方法で腰痛をごまかしつつ、嵐が過ぎさるのを待っています。
身体を壊すたびにしみじみ思いますが、ふだんはいろんなパーツが黙って仕事をしてくれてるから日々が過ごせるのですよね。感謝、感謝。(今までの地道な仕事をほめてあげるから早く治ってくれ〜ヽ(´o`;)